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TwitterとZoomを世に出した投資家に聞く「投資の決め手」と「投資とテクノロジーのトレンド」

起業家が困難に直面したときの対処方法とは何か?それは自分自身の心の声に耳を傾け、思いっきり方向転換してみること。そう語る、Young Sohn (ヤン・ソン)氏とBill Tai(ビル・タイ)氏は、いまやユニコーン企業でもあるCanvaを生み出したグローバルスタートアップコンテスト、 XTC の創業者でもあります。

30年以上、シリコンバレーでビジネスに関わり、ZoomやTwitterを世に出した投資家でもある二人。スーパーエンジェル投資家、そしてメンターとして起業家を育てる彼らが思う、投資する際の決め手になるもの、これから注目されるテクノロジー、なぜ今社会的インパクト投資が求められているのか……彼らの出会いとXTCの歴史を振り返りながら、二人が語り合った内容をお届けします。

※本記事は、2021年、XTCグローバルコンペティション ブートキャンプ1日目のレポートです。Youtubeでも「XTC 2021 Finalist Bootcamp: Conversation with Bill and Young」の題名でこちらの記事の元となった動画が閲覧できます。

記事の登場人物

young

Young Sohn(ヤン・ソン)
Walden Catalyst Ventures 創業者・マネージングパートナー、Harman international industries 取締役会長、元サムスン電子株式会社 代表取締役社長 兼 最高戦略責任者、カリフォルニア大学イノベーションカウンシル アドバイザー。Extreme Tech Challenge (XTC)共同設立者。

シリコンバレーの起業家であり、世界をより良く変える可能性を秘めたビジネスの構築と新技術の育成に情熱を注いでいる。直近では、サムスン電子の社長兼最高戦略責任者を務め、グローバルなイノベーション、投資、新規事業創出の戦略を主導し、80億ドルでのハーマン買収の陣頭指揮を執った。シリコンバレーの上場企業2社でCEOを務めたほか、Arm社、Cymer社(ASML)などで取締役を務める。CEOおよび取締役としてのリーダーシップのもと、PLX Technologies、Synnex Technologies、Inphiを上場させる。また、Berkeley Lights、Fungible、Zoom、Graphcore、TTTech Autoなど、革新的な企業のシード投資家でもある。また、未公開株式会社Silver Lake Partnersのシニアアドバイザー、Cadence社の取締役を務める。

Bill Tai(ビル・タイ)
エンジェル投資家、Charles River Ventures 名誉パートナー、カーティン大学非常勤教授。Extreme Tech Challenge(XTC)共同設立者。

1991年からベンチャーキャピタルとしてスタートアップに出資し、22社を上場させる。また、創業期に出資した8社の上場企業にて取締役を務める。半導体設計者としてキャリアを開始し、半導体産業の巨大企業TSMCに従事。イリノイ大学にて電子工学学士課程を優等で修了、ハーバード大学でMBAを取得。Treasure Data(ARM/Softbankが買収)、IPInfusion.com(東京証券取引所:4813)、iAsiaWorks(ゴールドマンサックスとモルガンスタンレー経由でIPO)を共同設立し、Hut8 Mining(NASDAQ:HUT)の取締役会長も務める。Canva、Color Genomics、Class.com、Dapper Labs (Cryptokitties / NBA Topshot)、Safety Culture、Tweetdeck/Twitter、Zoom Videoを発掘し、創業期から伴走するシード投資家の一人。ACTAI Globalの共同設立者。環境保護・起業による経済力向上を支援するAthletes Conservationists Technologists Artists & Innovatorsを運営する。

カイトサーフィンから始まった XTC

ヤン・ソンとビル・タイがXTCを設立するまで

ビル 90年代、ヤンと私は一緒にカイトサーフィンをはじめました。それが、我々と同じ志を持ち、意欲的で情熱的な人々と出会うきっかけになりました。

そして、そういった起業家精神を持つ人たちが集まるコミュニティーが出来上がり、シリコンバレーからRingCanvaの創設者などの成功した起業家がたくさん輩出されるようになったのです。

XTCのコンテストでは、これまでのベンチャーキャピタルでの経験を活かして、資金の面だけではなく、コミュニティーの構築や、可視化の向上、投資資金などのリソースの取得などで貢献したいと思っています。

ヤン XTCは目的主導のイノベーションをサポートするための世界規模のプラットフォームであり、さまざまな起業家を世界中から見つけ出す目的があります。そして、その起業家たちとスポンサーを結び付ける機会を与えることで新規事業が活性化し、スタートアップ企業が躍進するきっかけを提供することを目指しています。

現在、XTCは世界中から関心を集めていて、多数の応募をいただいています。今後もこのプラットフォームを利用することで多くの起業家が成功を収めることができるでしょう。

ビルとは、長年、公私ともに協力し合ってきました。投資やスポーツのことだけではなく、新技術やアイデアに関して、さまざまな話し合いを持ってきたのです。そして、彼と協力し一緒に活動することで、チームを活性化しイノベーションを加速できると思っています。

ビッグデータが破壊的イノベーションを巻き起こす

今後期待するテクノロジーとイノベーション

ビル インターネットの爆発的な普及によってテクノロジーが加速し、さまざまな変化をもたらしました。そして、情報がデータサイエンスによってデジタル化した結果、暗号通貨やNFTといったインターネット上での資産移動などに、多くの関心が集まっています。

デジタル化されたデータはクラウド上で動くようになり、Uber、 Zoom、 Airbnbなどが誕生しました。過去15年間、データサイエンスは多くのテクノロジーに変化を与えて来ましたが、今後も大きな影響を与えるでしょう。そして、そうした未来を見据えていち早く新しいトレンドを見つけ出すことが重要なのです。

ヤン 私たちは約10年前のビットコインの誕生や新しいテクノロジー、まだ実現化されていないさまざまなイノベーションなどについて議論を繰り返してきました。

そしてこれからは、データ収集や分析が未来のイノベーションへの重要な鍵になってくることでしょう。膨大な量のデータを分析し、それを活用することで、破壊的イノベーションが起こり、それらが私たちの生活に多くの変化をもたらすと信じています。

現在は、ビックデータの波を利用して膨大なデータ解析する重要な時期にきているので、これからがとても楽しみですね。

xtc-bootcamp

困難に直面したら、心の声に耳を傾けてみる

困難に直面した際、どう乗り切るか

ヤン 自分の会社を売却することになり失業状態になった時期に、ビルが今度は違うことをすべきだとアドバイスをしてくれたことで、方向転換の重要性を感じました。

私は90年代にアップルのタブレットをサポートする集積回路の製造会社を手掛けていました。そこで開発されたニュートロンというチップは、パフォーマンスが悪く、とても市場に出せる製品ではありませんでした。そのため、プロジェクトが終了する危機に陥ったのですが、当時のCEOの素晴らしい判断力のおかげで、集積回路製造会社からIP会社へと方向転換することが出来たのです。

その後は、ノキアと提携し携帯電話用のIPを提供することで、多額の収益を収めるまでの企業に成長しました。

個人的にも企業としても、変化を認識してその変化に対応することがとても重要なのです。 いつ何に転換するかは、マーケットを指標とすることや、チームや顧客の意見を受け入れることも重要ですが、最終的には、自分自身で考え、自分が本当にどの道に進むことを望んでいるのか、自分自身に耳を傾けることが大切です。

ビル 私自身も困難に直面したときには、方向転換することをとても大切にしています。困難を相手に真正面から戦うのではなく、そこから見出された方向性に自分の身を任せるということです。

賢くあるということは、幸運の道筋に自分自身を置くことです。それが出来れば人生の道は自然と切り開かれます。

投資の決め手は、人とプロセス、そしてNABC

XTC が投資先を判断する際に重要視すること

ヤン 会社に投資するかしないか決断するときの特別な方程式はありませんが、私はNABCのアナロジーを利用しています。

Nはニーズ(Needs)。行おうとしている問題解決に、どれだけニーズがあるか。
Aはアプローチ(Approach)。その問題解決に、どのようにアプローチしているか。
Bはベネフィット(Benefit)。問題解決によって、どれだけのベネフィットがもたらされるか。
Cはコンペティション(Competition)。問題解決のために、別の方法があるかどうか。

こういった項目を会社がしっかり認識しているかどうかを確認します。

ビル 創設者に関しては、判断力があり、意思決断をする優れた能力があるかどうかを確認します。会社が創設された初期段階では判断材料があまり多くないので、人とそのプロセスを重要視します。

今までの失敗やリスクに、どのように対応してきたのか。そして、判断に至るまでのプロセスや対応する態度などを考慮します。また、プライベートでも、どういったキャリア選択をしてきたかや、決断力や問題処理をする能力があるかどうかなども判断の基準にしています。

ヤン 起業家は投資家にアプローチする前に、自分のアイデアを明確にしておくことが大切です。

そして、ただ資金を調達するだけではなく、会社を築き上げ、成長させるために役立つ投資家やアドバイザーを見つけることも重要です。このような賢い資金調達ができる企業は、成功に繋がりやすいのです。

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XTCが生み出した、ユニコーン企業Canva

XTCが実際に投資し、成功した実例

ビル Zoomに投資した当時、ビデオ通話技術が時代遅れになり、これ以上はスケールアップできない状況でした。そして、テクノロジーが市場の構造的変化に影響を及ぼしているのは明確でした。そのため、コンピューティングをクラウド化してビデオコールのテクノロジーに構造変化を起こすことに意味を感じましたし、その結果が多くの企業に影響を及ぼすだろうと確信しました。

これが、今では誰もが利用するようになり、巨額の収益を収め、さらに成長し続けるビジネスとなったZoomができた背景です。

ヤン イスラエルから参加したXTCのファイナリストで、世界中の移民の人々に銀行サービスを提供するRewireという会社があります。彼らはコストを削減し、世界中どこにでも送金ができるような銀行サービスを構築し、移民の人たちでも平等に利用できるようにしたことで、大きな成功を収めました。

コンテストに参加することで、XTCのファイナリストたちは広く世界に露出することになるでしょう。そしてRewireと同じような恩恵と影響を受けることができると思います。

ビル XTCが始まった当初に成功を収めた例として、Doctor On DemandとCanvaというビジネスがあります。

Doctor On DemandはXTCコンテストの優勝者で、コンテストでの露出のおかげで2億ドル以上の資金調達に成功し、遠隔医療の波を推進するまでの大企業となりました。

Canvaはオーストラリアの小さな町に住む女の子が、高校の卒業アルバム作成のアイデアを元にはじめたスタートアップで、XTCのコンテストに参加したことでコミュニティーからの資金調達に成功しました。また、彼女はこのコンテストで脚光を浴びたことで、起業家やアドバイザーに出会うきっかけとなり、Canvaは今ではZoomと同じぐらいの有益性の高い会社にまで成長しました。

XTCのコンテストやブートキャンプには、お金では買うことが出来ない経験や出会いがあり、多くのことを学ぶいい機会になると思います。そしてこの過程の中で、コミュニティーが出来上がり、参加者全員がこのコミュニティーの一部となります。

XTCが、お互いのことを学び、助け合い、影響し合うための触媒となり、XTCで選ばれた人々はベンチャーキャピタリストやイノベーターにとっても、とても魅力的な存在になると思います。

いま求められている、社会的インパクト投資

社会的な影響力や有益性のある企業への投資

ヤン 以前から、サステイナビリティへの企業投資はリターンが少なく成功しないという偏見があります。私はそういった企業の成功例を提示することで、そのような偏見を払拭したいと思っています。そして、より良い変革をもたらす企業が、XTCを通じて成功することで、社会がより良い場所になると信じています。

起業家がXTCに参加し、さまざまな過程を経ることで、さらにいい起業家へと成長し、世界中の人々や社会に貢献し、大きなインパクトを与えていくことでしょう。

ビル 私の世代には、社会問題に着目し構造変化を推進する企業が、あまり存在しませんでした。90年代以後には、クリーンテックといった技術に投資が始まりましたが、アプローチが悪く、いい結果が生まれませんでした。そのため、持続可能性指向のビジネスが収益性の高いビジネスだと思われることはありませんでした。

しかし現在では、社会的な問題や課題に着目し、サステイナビリティをサポートする取り組みに資本が流れるようになってきています。なぜなら、今、こういった問題に取り組み、地球全体として対応していかなければ、今後地球が存在し続けることが出来ないという現実を資本市場が認識しているからです。

そのため、こういった問題の解決に着手し、根本的な構造変化を推進しようとしている次世代には大きな報酬があることでしょう。

社会問題への取り組みを目標としたXTCのコンテストと、構造変化を求めるシステムの流れ。これは、いまぴったりとしたタイミングで進んでいます。私たちはこの瞬間を長い間待ち続けてきました。

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テクノロジーと、社会的に取り組むべき課題

社会的に取り組むべき意味のある課題とその傾向

ビル 元々、XTCはテクノロジーのビジネスコンテストとしてスタートし、はじめはモバイルアプリに焦点を当てていました。そしてそれが一般消費者向けの技術となり、さらには破壊的イノベーションを生むテクノロジーとなり、現在ではサステイナビリティ向けのコンテストとして再編成され、5つの分野に分割されています。

なぜそのようになったのかと言うと、社会的な問題というのは何か一つだけの課題に取り組めば済む問題ではないからです。つまり、各分野のそれぞれの問題すべてが重要で、そのコンポーネントをすべて含んだ巨大システムを修正しなければ、いつかシステム全体が崩壊するのです。

ヘルスケア、教育、金融システム、気候や環境問題など、すべての問題が相互的に関連しているので、優先順位を付けて一つの課題だけに対応することはできません。これらすべての分野に、資金や才能を凝縮して、包括的に課題に取り組む必要があると考えています。

ヤン 最近ではデータエコノミーが私たちの行動を変化させており、データの信頼性という課題も出てきています。

データの出処、セキュリティー、AIなどのデータが偏っていると私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。そのため、分散型のブロックチェーンの技術に多大な関心が集まっており、こういったデータの扱い方や信頼性に関しては、まだまだ多くの課題が残されています。

XTCの価値と活用方法

ビル XTCは、コミュニティーがすべてだと思っています。Zoomイベントやコンテストなどの機会を通じて、多くのコネクションを作り、リソースを集め、蜘蛛の巣のようなネットワークを広めることが大切です。またXTCのコミュニティーではお互いの活動に興味を持ち、間違いを学び合うことで、空想上のアイデアも実現化できるようになっていくのです。

ヤン スタートアップのCEOは、周りのノイズやデータに常に対応しなければなりません。そのノイズの中から自分にとって一番大切な合図を見分けること。そして、その合図に焦点を当てて会社を築き上げることが大切なのです。

XTCの創設者2人がグローバルコンペティションブートキャンプの参加者に語ったことは、2人がXTCを立ち上げる前の話から、今後の社会的な課題を解決するために必要なことなど、幅広い内容となっていました。

なかでも、これまでにXTCが投資して成功してきた企業の話では、いかにXTCが優良な企業に投資をし、またその投資を受けた起業家がいかに成功を収めたかが語られました。

これからもXTCのスタートアップ・コンテストを活用し、多くの起業家が成功に導かれることでしょう。

現在、そして将来的に、起業を志す多くの企業が、XTCを活用し、資金調達やネットワークを得ることによって、それらの企業が社会的な課題の解決に向けて大きな貢献を果たすことが期待されます。

XTC
TwitterとZoomを世に出した投資家に聞く「投資の決め手」と「投資とテクノロジーのトレンド」

起業家が困難に直面したときの対処方法とは何か?それは自分自身の心の声に耳を傾け、思いっきり方向転換してみること。そう語る、Young Sohn (ヤン・ソン)氏とBill Tai(ビル・タイ)氏は、いまやユニコーン企業でもあるCanvaを生み出したグローバルスタートアップコンテスト、 XTC の創業者でもあります。

30年以上、シリコンバレーでビジネスに関わり、ZoomやTwitterを世に出した投資家でもある二人。スーパーエンジェル投資家、そしてメンターとして起業家を育てる彼らが思う、投資する際の決め手になるもの、これから注目されるテクノロジー、なぜ今社会的インパクト投資が求められているのか……彼らの出会いとXTCの歴史を振り返りながら、二人が語り合った内容をお届けします。

※本記事は、2021年、XTCグローバルコンペティション ブートキャンプ1日目のレポートです。Youtubeでも「XTC 2021 Finalist Bootcamp: Conversation with Bill and Young」の題名でこちらの記事の元となった動画が閲覧できます。

記事の登場人物

young

Young Sohn(ヤン・ソン)
Walden Catalyst Ventures 創業者・マネージングパートナー、Harman international industries 取締役会長、元サムスン電子株式会社 代表取締役社長 兼 最高戦略責任者、カリフォルニア大学イノベーションカウンシル アドバイザー。Extreme Tech Challenge (XTC)共同設立者。

シリコンバレーの起業家であり、世界をより良く変える可能性を秘めたビジネスの構築と新技術の育成に情熱を注いでいる。直近では、サムスン電子の社長兼最高戦略責任者を務め、グローバルなイノベーション、投資、新規事業創出の戦略を主導し、80億ドルでのハーマン買収の陣頭指揮を執った。シリコンバレーの上場企業2社でCEOを務めたほか、Arm社、Cymer社(ASML)などで取締役を務める。CEOおよび取締役としてのリーダーシップのもと、PLX Technologies、Synnex Technologies、Inphiを上場させる。また、Berkeley Lights、Fungible、Zoom、Graphcore、TTTech Autoなど、革新的な企業のシード投資家でもある。また、未公開株式会社Silver Lake Partnersのシニアアドバイザー、Cadence社の取締役を務める。

Bill Tai(ビル・タイ)
エンジェル投資家、Charles River Ventures 名誉パートナー、カーティン大学非常勤教授。Extreme Tech Challenge(XTC)共同設立者。

1991年からベンチャーキャピタルとしてスタートアップに出資し、22社を上場させる。また、創業期に出資した8社の上場企業にて取締役を務める。半導体設計者としてキャリアを開始し、半導体産業の巨大企業TSMCに従事。イリノイ大学にて電子工学学士課程を優等で修了、ハーバード大学でMBAを取得。Treasure Data(ARM/Softbankが買収)、IPInfusion.com(東京証券取引所:4813)、iAsiaWorks(ゴールドマンサックスとモルガンスタンレー経由でIPO)を共同設立し、Hut8 Mining(NASDAQ:HUT)の取締役会長も務める。Canva、Color Genomics、Class.com、Dapper Labs (Cryptokitties / NBA Topshot)、Safety Culture、Tweetdeck/Twitter、Zoom Videoを発掘し、創業期から伴走するシード投資家の一人。ACTAI Globalの共同設立者。環境保護・起業による経済力向上を支援するAthletes Conservationists Technologists Artists & Innovatorsを運営する。

カイトサーフィンから始まった XTC

ヤン・ソンとビル・タイがXTCを設立するまで

ビル 90年代、ヤンと私は一緒にカイトサーフィンをはじめました。それが、我々と同じ志を持ち、意欲的で情熱的な人々と出会うきっかけになりました。

そして、そういった起業家精神を持つ人たちが集まるコミュニティーが出来上がり、シリコンバレーからRingCanvaの創設者などの成功した起業家がたくさん輩出されるようになったのです。

XTCのコンテストでは、これまでのベンチャーキャピタルでの経験を活かして、資金の面だけではなく、コミュニティーの構築や、可視化の向上、投資資金などのリソースの取得などで貢献したいと思っています。

ヤン XTCは目的主導のイノベーションをサポートするための世界規模のプラットフォームであり、さまざまな起業家を世界中から見つけ出す目的があります。そして、その起業家たちとスポンサーを結び付ける機会を与えることで新規事業が活性化し、スタートアップ企業が躍進するきっかけを提供することを目指しています。

現在、XTCは世界中から関心を集めていて、多数の応募をいただいています。今後もこのプラットフォームを利用することで多くの起業家が成功を収めることができるでしょう。

ビルとは、長年、公私ともに協力し合ってきました。投資やスポーツのことだけではなく、新技術やアイデアに関して、さまざまな話し合いを持ってきたのです。そして、彼と協力し一緒に活動することで、チームを活性化しイノベーションを加速できると思っています。

ビッグデータが破壊的イノベーションを巻き起こす

今後期待するテクノロジーとイノベーション

ビル インターネットの爆発的な普及によってテクノロジーが加速し、さまざまな変化をもたらしました。そして、情報がデータサイエンスによってデジタル化した結果、暗号通貨やNFTといったインターネット上での資産移動などに、多くの関心が集まっています。

デジタル化されたデータはクラウド上で動くようになり、Uber、 Zoom、 Airbnbなどが誕生しました。過去15年間、データサイエンスは多くのテクノロジーに変化を与えて来ましたが、今後も大きな影響を与えるでしょう。そして、そうした未来を見据えていち早く新しいトレンドを見つけ出すことが重要なのです。

ヤン 私たちは約10年前のビットコインの誕生や新しいテクノロジー、まだ実現化されていないさまざまなイノベーションなどについて議論を繰り返してきました。

そしてこれからは、データ収集や分析が未来のイノベーションへの重要な鍵になってくることでしょう。膨大な量のデータを分析し、それを活用することで、破壊的イノベーションが起こり、それらが私たちの生活に多くの変化をもたらすと信じています。

現在は、ビックデータの波を利用して膨大なデータ解析する重要な時期にきているので、これからがとても楽しみですね。

xtc-bootcamp

困難に直面したら、心の声に耳を傾けてみる

困難に直面した際、どう乗り切るか

ヤン 自分の会社を売却することになり失業状態になった時期に、ビルが今度は違うことをすべきだとアドバイスをしてくれたことで、方向転換の重要性を感じました。

私は90年代にアップルのタブレットをサポートする集積回路の製造会社を手掛けていました。そこで開発されたニュートロンというチップは、パフォーマンスが悪く、とても市場に出せる製品ではありませんでした。そのため、プロジェクトが終了する危機に陥ったのですが、当時のCEOの素晴らしい判断力のおかげで、集積回路製造会社からIP会社へと方向転換することが出来たのです。

その後は、ノキアと提携し携帯電話用のIPを提供することで、多額の収益を収めるまでの企業に成長しました。

個人的にも企業としても、変化を認識してその変化に対応することがとても重要なのです。 いつ何に転換するかは、マーケットを指標とすることや、チームや顧客の意見を受け入れることも重要ですが、最終的には、自分自身で考え、自分が本当にどの道に進むことを望んでいるのか、自分自身に耳を傾けることが大切です。

ビル 私自身も困難に直面したときには、方向転換することをとても大切にしています。困難を相手に真正面から戦うのではなく、そこから見出された方向性に自分の身を任せるということです。

賢くあるということは、幸運の道筋に自分自身を置くことです。それが出来れば人生の道は自然と切り開かれます。

投資の決め手は、人とプロセス、そしてNABC

XTC が投資先を判断する際に重要視すること

ヤン 会社に投資するかしないか決断するときの特別な方程式はありませんが、私はNABCのアナロジーを利用しています。

Nはニーズ(Needs)。行おうとしている問題解決に、どれだけニーズがあるか。
Aはアプローチ(Approach)。その問題解決に、どのようにアプローチしているか。
Bはベネフィット(Benefit)。問題解決によって、どれだけのベネフィットがもたらされるか。
Cはコンペティション(Competition)。問題解決のために、別の方法があるかどうか。

こういった項目を会社がしっかり認識しているかどうかを確認します。

ビル 創設者に関しては、判断力があり、意思決断をする優れた能力があるかどうかを確認します。会社が創設された初期段階では判断材料があまり多くないので、人とそのプロセスを重要視します。

今までの失敗やリスクに、どのように対応してきたのか。そして、判断に至るまでのプロセスや対応する態度などを考慮します。また、プライベートでも、どういったキャリア選択をしてきたかや、決断力や問題処理をする能力があるかどうかなども判断の基準にしています。

ヤン 起業家は投資家にアプローチする前に、自分のアイデアを明確にしておくことが大切です。

そして、ただ資金を調達するだけではなく、会社を築き上げ、成長させるために役立つ投資家やアドバイザーを見つけることも重要です。このような賢い資金調達ができる企業は、成功に繋がりやすいのです。

xtc-bootcamp

XTCが生み出した、ユニコーン企業Canva

XTCが実際に投資し、成功した実例

ビル Zoomに投資した当時、ビデオ通話技術が時代遅れになり、これ以上はスケールアップできない状況でした。そして、テクノロジーが市場の構造的変化に影響を及ぼしているのは明確でした。そのため、コンピューティングをクラウド化してビデオコールのテクノロジーに構造変化を起こすことに意味を感じましたし、その結果が多くの企業に影響を及ぼすだろうと確信しました。

これが、今では誰もが利用するようになり、巨額の収益を収め、さらに成長し続けるビジネスとなったZoomができた背景です。

ヤン イスラエルから参加したXTCのファイナリストで、世界中の移民の人々に銀行サービスを提供するRewireという会社があります。彼らはコストを削減し、世界中どこにでも送金ができるような銀行サービスを構築し、移民の人たちでも平等に利用できるようにしたことで、大きな成功を収めました。

コンテストに参加することで、XTCのファイナリストたちは広く世界に露出することになるでしょう。そしてRewireと同じような恩恵と影響を受けることができると思います。

ビル XTCが始まった当初に成功を収めた例として、Doctor On DemandとCanvaというビジネスがあります。

Doctor On DemandはXTCコンテストの優勝者で、コンテストでの露出のおかげで2億ドル以上の資金調達に成功し、遠隔医療の波を推進するまでの大企業となりました。

Canvaはオーストラリアの小さな町に住む女の子が、高校の卒業アルバム作成のアイデアを元にはじめたスタートアップで、XTCのコンテストに参加したことでコミュニティーからの資金調達に成功しました。また、彼女はこのコンテストで脚光を浴びたことで、起業家やアドバイザーに出会うきっかけとなり、Canvaは今ではZoomと同じぐらいの有益性の高い会社にまで成長しました。

XTCのコンテストやブートキャンプには、お金では買うことが出来ない経験や出会いがあり、多くのことを学ぶいい機会になると思います。そしてこの過程の中で、コミュニティーが出来上がり、参加者全員がこのコミュニティーの一部となります。

XTCが、お互いのことを学び、助け合い、影響し合うための触媒となり、XTCで選ばれた人々はベンチャーキャピタリストやイノベーターにとっても、とても魅力的な存在になると思います。

いま求められている、社会的インパクト投資

社会的な影響力や有益性のある企業への投資

ヤン 以前から、サステイナビリティへの企業投資はリターンが少なく成功しないという偏見があります。私はそういった企業の成功例を提示することで、そのような偏見を払拭したいと思っています。そして、より良い変革をもたらす企業が、XTCを通じて成功することで、社会がより良い場所になると信じています。

起業家がXTCに参加し、さまざまな過程を経ることで、さらにいい起業家へと成長し、世界中の人々や社会に貢献し、大きなインパクトを与えていくことでしょう。

ビル 私の世代には、社会問題に着目し構造変化を推進する企業が、あまり存在しませんでした。90年代以後には、クリーンテックといった技術に投資が始まりましたが、アプローチが悪く、いい結果が生まれませんでした。そのため、持続可能性指向のビジネスが収益性の高いビジネスだと思われることはありませんでした。

しかし現在では、社会的な問題や課題に着目し、サステイナビリティをサポートする取り組みに資本が流れるようになってきています。なぜなら、今、こういった問題に取り組み、地球全体として対応していかなければ、今後地球が存在し続けることが出来ないという現実を資本市場が認識しているからです。

そのため、こういった問題の解決に着手し、根本的な構造変化を推進しようとしている次世代には大きな報酬があることでしょう。

社会問題への取り組みを目標としたXTCのコンテストと、構造変化を求めるシステムの流れ。これは、いまぴったりとしたタイミングで進んでいます。私たちはこの瞬間を長い間待ち続けてきました。

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テクノロジーと、社会的に取り組むべき課題

社会的に取り組むべき意味のある課題とその傾向

ビル 元々、XTCはテクノロジーのビジネスコンテストとしてスタートし、はじめはモバイルアプリに焦点を当てていました。そしてそれが一般消費者向けの技術となり、さらには破壊的イノベーションを生むテクノロジーとなり、現在ではサステイナビリティ向けのコンテストとして再編成され、5つの分野に分割されています。

なぜそのようになったのかと言うと、社会的な問題というのは何か一つだけの課題に取り組めば済む問題ではないからです。つまり、各分野のそれぞれの問題すべてが重要で、そのコンポーネントをすべて含んだ巨大システムを修正しなければ、いつかシステム全体が崩壊するのです。

ヘルスケア、教育、金融システム、気候や環境問題など、すべての問題が相互的に関連しているので、優先順位を付けて一つの課題だけに対応することはできません。これらすべての分野に、資金や才能を凝縮して、包括的に課題に取り組む必要があると考えています。

ヤン 最近ではデータエコノミーが私たちの行動を変化させており、データの信頼性という課題も出てきています。

データの出処、セキュリティー、AIなどのデータが偏っていると私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。そのため、分散型のブロックチェーンの技術に多大な関心が集まっており、こういったデータの扱い方や信頼性に関しては、まだまだ多くの課題が残されています。

XTCの価値と活用方法

ビル XTCは、コミュニティーがすべてだと思っています。Zoomイベントやコンテストなどの機会を通じて、多くのコネクションを作り、リソースを集め、蜘蛛の巣のようなネットワークを広めることが大切です。またXTCのコミュニティーではお互いの活動に興味を持ち、間違いを学び合うことで、空想上のアイデアも実現化できるようになっていくのです。

ヤン スタートアップのCEOは、周りのノイズやデータに常に対応しなければなりません。そのノイズの中から自分にとって一番大切な合図を見分けること。そして、その合図に焦点を当てて会社を築き上げることが大切なのです。

XTCの創設者2人がグローバルコンペティションブートキャンプの参加者に語ったことは、2人がXTCを立ち上げる前の話から、今後の社会的な課題を解決するために必要なことなど、幅広い内容となっていました。

なかでも、これまでにXTCが投資して成功してきた企業の話では、いかにXTCが優良な企業に投資をし、またその投資を受けた起業家がいかに成功を収めたかが語られました。

これからもXTCのスタートアップ・コンテストを活用し、多くの起業家が成功に導かれることでしょう。

現在、そして将来的に、起業を志す多くの企業が、XTCを活用し、資金調達やネットワークを得ることによって、それらの企業が社会的な課題の解決に向けて大きな貢献を果たすことが期待されます。

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