Extreme Tech Challenge(以降、XTC)創業者の一人、Bill Tai(ビル・タイ)氏のブロックチェーン技術への向き合い方、そしてその未来について彼が予想した展望が、Forbesにて公開されています。2015年8月に公開された記事の一部を引用し、当時の彼のブロックチェーンに関する考えをさかのぼります。
ビットコイン価格の変遷
2021年11月、ビットコインの価格は、1BTCで760万円を超えていました。大暴落していると言われつつも、2022年8月現在、ビットコインの価格は294万円です。それがこれからご紹介するForbesの記事がリリースされた2015年には、約4万円ほどだったのです。
2010年5月に10,000BTCでピザ2枚がアメリカで購入されたことが世界初の決済となりました。そこから、2011年にはアメリカのメディアで話題となり、ビットコインへの注目度が高まります。それ以降、2017年に約220万円まで届きましたが、すぐに価格が暴落し2018年には30万円台にまで1BTCの価格が落ち込みました。2020年から、それまでとは一線を画す相場の上下を繰り返し、いまでは多くの人が知るところとなったことでしょう。
では、2015年の時点にXTC創業者・投資家であるビル・タイ氏は、ビットコインを支えるブロックチェーン技術の未来がどうなると予想していたのか、記事を引用しながら解説していきます。
ブロックチェーン技術とデータの関連性
デジタル・ミュージックのパイオニアであり現在はRiptide Music PublishingのCIOとACME innovationの共同設立者であるGeorge Howard (ジョージ・ハワード)氏が聞き手となり、記事はこのような質問からスタートしました。
ジョージ ブロックチェーン技術は、インターネットに取って代わる可能性があります。これについては、ぜひあなたの意見を聞きたいと思います。あなたはBitFury(ビット・ファリー)という会社に出資しているので、よくこの分野に関する見識をお持ちだと思います。ブロックチェーン技術について、またそれがデータとどのように関連するのか、あなたの考えを聞かせてください。
ビル BitFuryは、Valery Vavilov(ヴァレリー・ヴァヴィロフ)によって設立されました。この会社は、ビットコインとブロックチェーンを処理するインフラを世界中に展開している大企業の一つで、「Chance to do it agein(もう一度やり直すチャンス)」という大きな構想を描いています。
基本的には、インターネットは情報をパケット化し、一つのデータをより小さなブロックに分割させ、流動的でどこでもアクセスできるようにしました。そして暗号通貨は価値をパケット化して、可動的で流動的に情報を送信できるようにしたと思います。
(出典:Forbes“Blockchain As The Source-DNA For Content Attribution: A Conversation With Bill Tai – Part 1”)
ビル・タイ氏はすでに2015年時点で、BitFuryへ投資を行っていました。二人の会話からは、ブロックチェーンがインターネットに取って代わる可能性をすでに予想していたことが読み取れます。
ブロックチェーン技術が可能にするデジタルの権利
ジョージ氏がForbesへ執筆した記事が、なんの引用もなしにSEOブログとして盗用された事件が起きます。それがさまざまなメディアに再掲載され、2日で400人もの人たちから「似たような記事がある」と指摘されたことにも触れ、ブロックチェーンと著作権についてもこのように話が進みます。
ジョージ ではブロックチェーン技術は、こういった問題をどのように解消することができるのでしょうか?
ビル そう、技術はあるのですが、実装がまだです。ブロックチェーンはID管理システムなのです。
ジョージ なるほど。
ビル そして、価値が流動的に伝達される唯一の方法は基礎となるテクノロジーが送り手と受け手を識別し、彼らが何であるかを認知しているからです。さらにA地点からB地点に向かうコンテンツや価値の断片を一意に識別し、それを記録し、認識しているからです。 そしてその情報は消えないのです。書き留め、コピーし、台帳に書き込むようなもので、永久にそこに存在します。
ジョージ しかし、問題はその点です。たとえば、私が権利のないものを台帳に載せて、それを私のものだと主張するのをどうやって防ぐのでしょうか?
ビル だから私は、テクノロジーの機能はもうすでにあるけれど、実装はあるべき姿になっていないと言ったのです。まだ実装できるレベルのものが作れていないのです。
しかし時代も進化しつつあります。 Necker Block Chain Summit (ネッカー・ブロックチェーン・サミット) でOliver Luckett (オリバー・ラケット)という人物に出会いました。そのサミットでは私たちは7、8人のチームに分かれ、グループ全体とそれぞれのチームに、ブロックチェーンで実装できるゲームチェンジャーになりうるものを考えて欲しいと頼んだのです。
そこでソーシャルメディアの専門家であるオリバーが考えたアイデアは、「ソーシャルメディアの系図システム」というものでした。
ジョージ なるほど。
ビル あなたが書いた記事についておっしゃってるように、YouTubeにとても面白い動画を投稿した子どもがいて、誰かがそれをダウンロードして、小さなメディアブログに再投稿したとします。彼らは300万回の再生回数とたくさんの広告費を手に入れられるかもしれませんが、その子どもは何も手に入れられないでしょう。
ジョージ その通りです。いま、あなたがおっしゃったのは音楽ビジネスの話にも繋がりますね。
ビル そうです。通貨が生まれるように、コンテンツの一部が生まれると、コンテンツのアイデンティティと人のアイデンティティを結びつけてブロックチェーンに登録され、それが動くたびに、ビットコインのように、誰かが私に返済し、私がその一部を取り出してあなたに支払うたびに、それを取引として記録し、その出どころがどこかわかるような方法があったらどうでしょう。
ですから、もし系図を見るような方法があれば、どんなコンテンツでも、それが最初に作られた場所から出どころを調べることができるようになります。
ジョージ その前提は、あなたの例で言うと、子どもが、自分が権利を持っていない、あるいは作ってもいないものを、ダウンロードを経てアップロードした場合、その最初のクリエイターがアップロードしていれば、「これはあなたのものではありません」と、台帳が示すことになります。これは二次的著作物を作成したことになり、いわゆる「本当の作り手」を追跡できるようになるわけです。
ビル その通りです。
(出典:Forbes“Blockchain As The Source-DNA For Content Attribution: A Conversation With Bill Tai – Part 1”)
ビル・タイが投資先BitFuryに期待していたこと
ブロックチェーン技術を応用することに話が進むと、2015年時点の技術からさらに必要な技術は何になるのかというところに話がおよんでいきます。
ビル この技術には可能性があります。私が思うに、存在すべきなのは、技術的な観点から現在構築されているもので超スケーラブルで非常に低コストのインフラなのです。
ジョージ そうですね。
ビル そうすれば、すべてを追跡することができます。そして、もし通貨の動きが本当に定着して軌道に乗れば、通貨の動きによって補助されるインフラがたくさん出てくると思うんです。そして、その上に他のものを構築することができます。
そのシステム上で、低額な費用で何かを動かすことができるのです。これはもう実際に存在しており、私が投資しているBitFuryにぜひやってもらいたいことの一つは、これを利用できるレベルにシステムを構築することです。
BitFuryは、電球にビットコインマイナーを搭載し、それを配ったり、安価で販売したりして、利用を促進するという、非常にクールなプロジェクトを実施しています。これらはいずれも、ブロックチェーンを動かす巨大なノードをそのノード下で稼働させるための取り組みです。
そのため、ウェブ上にあるすべての情報を処理する負担を負う企業はなく、彼らはアプリケーションを開発することができるのです。彼らはただアクセスするだけで、それを保持することもできます。そして、市場原理に任せて、必要とされるものが勝ち残るのです。
ジョージ そうですね。私たちにはある意味その刺激が必要です。
これを言うとまたみんなに非難のされてしまいますが、私はいつも「ブロックチェーンにとってビットコインは、インターネットにとってのポルノであるようなものだ」と言っています。この2つが結びついていることは分かっていますし、その他のことも分かっています。でも、そこには経済的な需要があり、大きな利益などを生み出す可能性があるので、ビットコインはブロックチェーンに繋がる他のユースケースを背後に引きずっていくことになると思っています。
ビル 私もそう思います。
(出典:Forbes“Blockchain As The Source-DNA For Content Attribution: A Conversation With Bill Tai – Part 1”)
2022年の現在、ビル・タイの投資先はどうなったのか?
このForbesの記事がリリースされた2015年から、7年経過した2022年の現在、BitFuryの時価総額は10億ドル、日本円では1000億円を超え、ユニコーン企業となりました。
2018年には一時期ビットコインの大暴落が開始したことから、日本でも仮想通貨について疑心難儀だった人は少なくなかったことでしょう。
ビル・タイ氏は2015年の時点から、このブロックチェーンの先行きを予見し、仮想通貨の可能性を見出し、BitFuryへ投資を行っていただだでなく、クリプトの分野で他にはNFTゲームのDappers Labsにも初期投資を行なっていました。そして現在このDappers Labsもユニコーン企業となり、時価総額は2021年時点で2800億円となっています。
2018年の大暴落でブロックチェーン関連事業への投資を諦めた投資家がいるであろうなか、本質を見極め、エンジェル投資家としてそのままアクセルを踏み続けてくれたことは起業家にとっても心強かったことでしょう。
世界で大きなビジネスをしようと思ったとき、投資家から資金面や人脈、そしてノウハウといった情報を享受する代わりに、起業家は自社の経営方針についても情報を共有することになるかもしれません。
起業家の心強い存在になりうるのは、一体どういった投資家なのか……それは、もしかすると、TwitterやZoom、Canvaなどいまやユニコーンとなった企業に超初期から投資をしてきたビル・タイのような投資家なのかもしれません。
もしもあなたが起業家の一人だったとしたなら、そんな投資家から投資をしてもらうチャンスを掴みたくはありませんか?
いずれは事業を成長させ、世界へ大きく羽ばたきたいと思っているのだとしたら、ビル・タイ氏とヤン・ソン氏が創設したXTCへ参加してみるのはいかがでしょうか。年に一度、日本予選をXTC JAPANとして実施しています。
そしてXTC日本予選で優勝するとグローバル大会への道が開かれます。
XTCへの参加がきっかけで、いまではユニコーン企業となったCanvaのように、その仲間入りを果たす第一歩を踏み出すことができるかもしれません。
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