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XTC JAPAN連続起業家川口耕介氏のキーノートトーク
XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

今回はXTC Japan 2022においてキーノートスピーカーとして登壇された川口耕介(かわぐち こうすけ)さんのお話しをご紹介します。

川口さんは2001年に渡米後、Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)でエンジニアとして10年ほど働きました。その後サン・マイクロシステムズがOracle(オラクル)に買収されたということをきっかけにCloudBees(クラウドビーズ)という名のスタートアップを設立し、500人ほどの企業まで成長させた経験をもお持ちです。

さまざまな企業で働き、実際にスタートアップをグロースさせた経験をお持ちの川口さんのお話しの中には、起業家として成功を目指す方にとてもためになる情報がたくさんありました。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

世界TOPのテクノロジー産業は、コミュニティから構築されている

川口 アメリカで仕事をして強く感じるようになったのは、アメリカ、ヨーロッパ、イスラエル、そしておそらくインドまでの地域のテクノロジー産業は、ひとつの大きなコミュニティを形成しているということです。

このコミュニティ内で生まれたテクノロジー、プロダクトは、このコミュニティの中全体で売れるという、ある種の商圏と言いますか、商いの範囲でありますし、ものづくりの方法が共有されている、ある種の文化圏でもあります。

また、このコミュニティ内の人がこの会社から別の会社に移る過程で、ノウハウや仕事の仕方、お互いの知り合いなどを連れて行くような、そんな人と人のネットワークの中で、さまざまなビジネスが進んでいくという側面があるのかなと強く感じました。もうひとつには、言葉があります。このコミュニティの人たちは英語を非常に流暢に話せるため、一緒に仕事をする上でコミュニケーションに齟齬がないのです。そのため、こういったことが可能になるという背景もあります。

今世界で付加価値の高いテクノロジー産業がどこにあるのかと言えば、やはりこのコミュニティの中にあるのです。例えばGoogleやマイクロソフトのようにメジャーで、名前がよく知られている例もありますが、それだけではなくて、裾野と言いますか、テクノロジーを大切にしたビジネスのようなものが数多くあると感じます。

身近な例ですと、数年前にウォルマートは自社のEコマース部門が未成熟であるために、内部で作り直すのを諦め、外から何千億円かけてEコマースの会社を買収し、自社のEコマース部門を刷新しました。そういうこともありますし、あるいはさまざまな会社で、自分のビジネスにとってテクノロジーが大切と感じることがあります。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

グローバルコミュニティの視野に入らない日本のテクノロジー産業

一方、私が開発したJenkins(ジェンキンス)はオープンソースプロジェクトに関わっていたことから、世界各地のソフトウェア開発の現場に行ってお話をする機会がありました。そういった高付加価値の知識、資本集約型のようなテクノロジー産業とは異なり、世界の別の所にはより付加価値の低い、労働集約的なIT産業が間違いなく存在しているのです。

それはSIerを主にしたビジネスやウォーターフォール的なソフトウェア開発事業会社向けのもの、年月単位やコスト+αという感じで、ものを作っている商売もあります。フランスはそうですし、東ヨーロッパの安価な人件費を利用して、こういったソフトウェア開発の外注を請け負う、人を出すサービスのような会社が数多く存在します。

また、僕には日本も市場規模としては圧倒的にそのようなIT産業が多いと感じられます。それを見ていると、日本のテクノロジー産業はこれでいいのかなと感じます。つまり、この日本のテクノロジー産業、あるいはそれに携わっている人たちというのは先ほどお話した、アメリカからインドまでをまたぐひとつのコミュニティに参加できていない、その人たちの視野には入っていないという現状が残念ながらあります。

僕としては、それはもったいないことだと思います。アメリカに長く住んでいる僕は両方のコミュニティに優秀な人がいることをよく知っていますので、その2つのテクノロジー産業に橋をかけたいなと思っています。そのゴールのために、今回Launchable(ローンチャブル)という会社で日本にエンジニアリングチームを作っています。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

XTC Japanとみなさんの可能性

今回XTC Japanでお話できる機会をいただいて素晴らしいなと思ったのは、こういうイベントに参加される皆さんは、すでに最初から目線が日本の外を向いているという点です。

僕が自分の会社でできることはたかが知れていて、せいぜいエンジニアリングチームを日本に作る程度です。しかし、こうして皆さんが、皆さんなりに日本側から橋をかけて、世界につなげていこうとすると、そういうことが残るのではないかと思います。

また、より多くの橋を両側からかけるような、ひとつひとつの積み重ねで、結局人と人のつながりは成り立っていると思います。より多くの緊密なネットワークが日米の間で形成されていくのは、大変素晴らしいことだと僕は思っているところです。

それからもうひとつ、逆説的かもしれませんが、この日本がどうという話は、ある意味一人ひとりの人にとってはどうでもいいことだと僕は思うわけです。では、大切なことは何かと言うと、それはやはり皆さんが一人一人輝くことだと思うのです。

先ほどクラウドビーズという会社の話を少ししました。これは僕にとって最初のスタートアップの経験だったわけです。やはりスタートアップというものは大変です。日々苦労の連続ですし、できることもどんどん変わっていきます。

次から次へとチャレンジが現れて、それを解決していかないといけないのです。特にサン・マイクロシステムズのときに、僕は技術者として良いプログラムを書いていれば、それでよかったのです。する事は決まっていたし、深く掘って行けばよかったし、僕は自分が優れているという自信を持てたので、仕事をしていて気持ちよかったのです。

しかしクラウドビーズというスタートアップでは、僕はCTOという立場でしたので、会社が大きくなるにつれてすることがどんどん変わっていくわけです。少し自信がついてきたと思っても、すぐに違うことをしなければならないと。あるいは何をしていても、自分の時間をこれに使って良いのだろうか、他の人でもできる仕事をしていないだろうか、といったことを常に頭のどこかで考えていて、なかなか大変でした。精神的にも大変でしたし、今までとは違う種類のチャレンジをしていたと僕は思っています。

一度目のチャレンジが二度目をさらに輝かせる

しかし、現在ローンチャブルという2つ目のスタートアップを作り、いわば二周目にチャレンジしてみて思うのは、クラウドビーズ時代はこれでいいのかなと思うこともありましたが、その時に自分は成長して学んでいたのだなということです。それを感じたとき、僕は非常に嬉しくなりました。

同時に、苦労をしていても、CTOのような立場は、自身をプロジェクトすることも仕事の一部であるわけで、人にはなかなか言えないものです。そう考えると、なかなか孤独なものです。その昔の自分の立場に今の皆さんを重ねたとき、僕から伝えたいことがあるなと思いましたので、その話をしたいなと思います。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

ひとつはですね、その時その時取り組んでいて面白いこと、手ごたえを感じることをしていればいいのです。ある種の開き直りです。そうして一歩一歩手ごたえを感じることを続けていると、それが次へとつながっていくのです。

世の中うまくできているなと、僕は思ったわけです。それはすなわちどういうことかと言うと、「ここを目指さなければならない」という目標を最初に設定したとしても、何が何でもそこへ向かわなければならないということではないと思うようになったのです。

実際にクラウドビーズを最初に作った時にも、会社のビジョンと言いますか、「これをやるぞ」という事は、今していることとはかなり違っていたのです。それはどういうことかと言うと、その時その時に手ごたえを感じることをやってみて、道が開くまで、導かれて歩んでいくということです。

そうすると、どこかにたどり着くはずです。本当にうまくできています。そうして振り返ったときには道のようなものができていて、ややもすると、「こういうことだったのか」という、ある種のストーリーみたいなものがわかるのです。

振り返ってみることはできても、前を向いて「この旅はこういう風になっている」と、最初からわかる性質のものではないのです。「明日の答えが見えない」と言えば少し暗い感じになりますが、これからどうなっていくのかはわからない。そのわからなさについて、さほど不安に思う必要はありません。そのように安心感を持って一日一日、面白いことに取り組んでいけば良いのではないのでしょうか。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

「繰り返しチャレンジする」マインドセットが、結果につながる

また、スタートアップの仕事の醍醐味は、さまざまなことをできることにあると思うのです。僕もエンジニアだった時には、自分の得意なことをすることに喜びを感じていたのですが、そうではなくて、さまざまなことにチャレンジしてみる。そうすると、何をしてもその中に面白さを見出せるようになり、繰り返していく過程で、少しずつ上達していくことが大きな喜びであると感じられます。

このマインドセットに切り替えてからは、スタートアップを続けていくのがずっと楽しくなったと僕は自分で思っています。僕と同じように、何かひとつの道を極め、腕を磨いた後にスタートアップに来る人たちは結構いるのではないかと。そういった方たちが、自分の自信や過去の業績だけに捉われずに、さまざまなことに積極的にチャレンジしていただきたいと僕は思っております。

スティーブ・ジョブズも同じようなことを言っています。彼は大学の卒業式かなにかのスピーチで、自身が大学に通っていた時に、何かの拍子でタイポグラフィのコースを取ったという話をするのです。それは何故かと言うと、たまたまそのクラスに入っていく女の子に気をとられたからだと。

その時点ではタイポグラフィが将来どうなるか、また何につながっていくのかなどといった展望は、彼の中にまだなかったわけです。しかし、結果的にはその時に学んだタイポグラフィの知識が、デザインに対する深い思い入れにつながっていき、やがてはAppleのプロダクトの道に大きく貢献していくのです。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

一期一会でチャンスに身を任せた先に、道がある

何かに取り組んでいる時、それが何につながっていくのかはわからなくても、そのチャンスに身を任せても良いということです。そう思った時、その瞬間やそのとき周りにいる人たち、そういった機会をひとつずつ大事にしていくことが非常に大切だと思えるようになったのです。これは日本の茶道でいう、一期一会的な考え方です。

そういうふうに気持ちを持って目の前の問題に取り組み、そこから何かを学び、それがどこにつながっていったとしても、その旅路をエンジョイすることができたら、スタートアップがビジネスとしてどこまでうまくいくのかといった1次元的なゴールだけに支配されることなく、より旅路の喜びそのものを感じてもらえるようになるのではないかなと、僕は思います。

それをより多くの人に感じていただきたいですし、そういう考え方をより多くの人に広めたいのです。

スタートアップはある種の不安がつきまとうものかもしれませんが、安心して何かに飛び込んでいけば良いのです。何かがあなたを支えてくれますし、その道はどこかにつながっています、というお話をさせていただきたいなと思いました。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

このXTCJapanというイベントは、皆さんにとっての清水の舞台と言いますか、ジャンプ台と言いますか、次の何かのステップにつながっていくものになれば、5年後あるいは10年後、20年後に、またさまざまなところに思わぬ咲く花が咲くと思います。

僕も20年前、アメリカに来たときの自分を考えたときには、今の姿はとても想像がつかなかったものです。そのような感じで、さまざまなところで花が開いていけば、すごく楽しみなことだと僕は思っています。

起業相談はGaiax STARTUP CAFE!

NEXTAパートナー企業の、株式会社ガイアックスは社会課題解決事業をサポートしているスタートアップスタジオです。
ガイアックスの実施しているSTARTUP CAFEでは、「ビジネスアイデアはあるけど次のステップがわからない」、「そもそも自分のアイデアの価値を知りたい」といった相談を無料で受け付けています。
事業相談はもちろん、良い事業案にはバックオフィス支援から出資まで実施しています。
起業を考えている方は年齢に関わらずお気軽にご相談ください!

XTC JAPAN
XTC JAPAN連続起業家川口耕介氏のキーノートトーク
XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

今回はXTC Japan 2022においてキーノートスピーカーとして登壇された川口耕介(かわぐち こうすけ)さんのお話しをご紹介します。

川口さんは2001年に渡米後、Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)でエンジニアとして10年ほど働きました。その後サン・マイクロシステムズがOracle(オラクル)に買収されたということをきっかけにCloudBees(クラウドビーズ)という名のスタートアップを設立し、500人ほどの企業まで成長させた経験をもお持ちです。

さまざまな企業で働き、実際にスタートアップをグロースさせた経験をお持ちの川口さんのお話しの中には、起業家として成功を目指す方にとてもためになる情報がたくさんありました。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

世界TOPのテクノロジー産業は、コミュニティから構築されている

川口 アメリカで仕事をして強く感じるようになったのは、アメリカ、ヨーロッパ、イスラエル、そしておそらくインドまでの地域のテクノロジー産業は、ひとつの大きなコミュニティを形成しているということです。

このコミュニティ内で生まれたテクノロジー、プロダクトは、このコミュニティの中全体で売れるという、ある種の商圏と言いますか、商いの範囲でありますし、ものづくりの方法が共有されている、ある種の文化圏でもあります。

また、このコミュニティ内の人がこの会社から別の会社に移る過程で、ノウハウや仕事の仕方、お互いの知り合いなどを連れて行くような、そんな人と人のネットワークの中で、さまざまなビジネスが進んでいくという側面があるのかなと強く感じました。もうひとつには、言葉があります。このコミュニティの人たちは英語を非常に流暢に話せるため、一緒に仕事をする上でコミュニケーションに齟齬がないのです。そのため、こういったことが可能になるという背景もあります。

今世界で付加価値の高いテクノロジー産業がどこにあるのかと言えば、やはりこのコミュニティの中にあるのです。例えばGoogleやマイクロソフトのようにメジャーで、名前がよく知られている例もありますが、それだけではなくて、裾野と言いますか、テクノロジーを大切にしたビジネスのようなものが数多くあると感じます。

身近な例ですと、数年前にウォルマートは自社のEコマース部門が未成熟であるために、内部で作り直すのを諦め、外から何千億円かけてEコマースの会社を買収し、自社のEコマース部門を刷新しました。そういうこともありますし、あるいはさまざまな会社で、自分のビジネスにとってテクノロジーが大切と感じることがあります。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

グローバルコミュニティの視野に入らない日本のテクノロジー産業

一方、私が開発したJenkins(ジェンキンス)はオープンソースプロジェクトに関わっていたことから、世界各地のソフトウェア開発の現場に行ってお話をする機会がありました。そういった高付加価値の知識、資本集約型のようなテクノロジー産業とは異なり、世界の別の所にはより付加価値の低い、労働集約的なIT産業が間違いなく存在しているのです。

それはSIerを主にしたビジネスやウォーターフォール的なソフトウェア開発事業会社向けのもの、年月単位やコスト+αという感じで、ものを作っている商売もあります。フランスはそうですし、東ヨーロッパの安価な人件費を利用して、こういったソフトウェア開発の外注を請け負う、人を出すサービスのような会社が数多く存在します。

また、僕には日本も市場規模としては圧倒的にそのようなIT産業が多いと感じられます。それを見ていると、日本のテクノロジー産業はこれでいいのかなと感じます。つまり、この日本のテクノロジー産業、あるいはそれに携わっている人たちというのは先ほどお話した、アメリカからインドまでをまたぐひとつのコミュニティに参加できていない、その人たちの視野には入っていないという現状が残念ながらあります。

僕としては、それはもったいないことだと思います。アメリカに長く住んでいる僕は両方のコミュニティに優秀な人がいることをよく知っていますので、その2つのテクノロジー産業に橋をかけたいなと思っています。そのゴールのために、今回Launchable(ローンチャブル)という会社で日本にエンジニアリングチームを作っています。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

XTC Japanとみなさんの可能性

今回XTC Japanでお話できる機会をいただいて素晴らしいなと思ったのは、こういうイベントに参加される皆さんは、すでに最初から目線が日本の外を向いているという点です。

僕が自分の会社でできることはたかが知れていて、せいぜいエンジニアリングチームを日本に作る程度です。しかし、こうして皆さんが、皆さんなりに日本側から橋をかけて、世界につなげていこうとすると、そういうことが残るのではないかと思います。

また、より多くの橋を両側からかけるような、ひとつひとつの積み重ねで、結局人と人のつながりは成り立っていると思います。より多くの緊密なネットワークが日米の間で形成されていくのは、大変素晴らしいことだと僕は思っているところです。

それからもうひとつ、逆説的かもしれませんが、この日本がどうという話は、ある意味一人ひとりの人にとってはどうでもいいことだと僕は思うわけです。では、大切なことは何かと言うと、それはやはり皆さんが一人一人輝くことだと思うのです。

先ほどクラウドビーズという会社の話を少ししました。これは僕にとって最初のスタートアップの経験だったわけです。やはりスタートアップというものは大変です。日々苦労の連続ですし、できることもどんどん変わっていきます。

次から次へとチャレンジが現れて、それを解決していかないといけないのです。特にサン・マイクロシステムズのときに、僕は技術者として良いプログラムを書いていれば、それでよかったのです。する事は決まっていたし、深く掘って行けばよかったし、僕は自分が優れているという自信を持てたので、仕事をしていて気持ちよかったのです。

しかしクラウドビーズというスタートアップでは、僕はCTOという立場でしたので、会社が大きくなるにつれてすることがどんどん変わっていくわけです。少し自信がついてきたと思っても、すぐに違うことをしなければならないと。あるいは何をしていても、自分の時間をこれに使って良いのだろうか、他の人でもできる仕事をしていないだろうか、といったことを常に頭のどこかで考えていて、なかなか大変でした。精神的にも大変でしたし、今までとは違う種類のチャレンジをしていたと僕は思っています。

一度目のチャレンジが二度目をさらに輝かせる

しかし、現在ローンチャブルという2つ目のスタートアップを作り、いわば二周目にチャレンジしてみて思うのは、クラウドビーズ時代はこれでいいのかなと思うこともありましたが、その時に自分は成長して学んでいたのだなということです。それを感じたとき、僕は非常に嬉しくなりました。

同時に、苦労をしていても、CTOのような立場は、自身をプロジェクトすることも仕事の一部であるわけで、人にはなかなか言えないものです。そう考えると、なかなか孤独なものです。その昔の自分の立場に今の皆さんを重ねたとき、僕から伝えたいことがあるなと思いましたので、その話をしたいなと思います。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

ひとつはですね、その時その時取り組んでいて面白いこと、手ごたえを感じることをしていればいいのです。ある種の開き直りです。そうして一歩一歩手ごたえを感じることを続けていると、それが次へとつながっていくのです。

世の中うまくできているなと、僕は思ったわけです。それはすなわちどういうことかと言うと、「ここを目指さなければならない」という目標を最初に設定したとしても、何が何でもそこへ向かわなければならないということではないと思うようになったのです。

実際にクラウドビーズを最初に作った時にも、会社のビジョンと言いますか、「これをやるぞ」という事は、今していることとはかなり違っていたのです。それはどういうことかと言うと、その時その時に手ごたえを感じることをやってみて、道が開くまで、導かれて歩んでいくということです。

そうすると、どこかにたどり着くはずです。本当にうまくできています。そうして振り返ったときには道のようなものができていて、ややもすると、「こういうことだったのか」という、ある種のストーリーみたいなものがわかるのです。

振り返ってみることはできても、前を向いて「この旅はこういう風になっている」と、最初からわかる性質のものではないのです。「明日の答えが見えない」と言えば少し暗い感じになりますが、これからどうなっていくのかはわからない。そのわからなさについて、さほど不安に思う必要はありません。そのように安心感を持って一日一日、面白いことに取り組んでいけば良いのではないのでしょうか。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

「繰り返しチャレンジする」マインドセットが、結果につながる

また、スタートアップの仕事の醍醐味は、さまざまなことをできることにあると思うのです。僕もエンジニアだった時には、自分の得意なことをすることに喜びを感じていたのですが、そうではなくて、さまざまなことにチャレンジしてみる。そうすると、何をしてもその中に面白さを見出せるようになり、繰り返していく過程で、少しずつ上達していくことが大きな喜びであると感じられます。

このマインドセットに切り替えてからは、スタートアップを続けていくのがずっと楽しくなったと僕は自分で思っています。僕と同じように、何かひとつの道を極め、腕を磨いた後にスタートアップに来る人たちは結構いるのではないかと。そういった方たちが、自分の自信や過去の業績だけに捉われずに、さまざまなことに積極的にチャレンジしていただきたいと僕は思っております。

スティーブ・ジョブズも同じようなことを言っています。彼は大学の卒業式かなにかのスピーチで、自身が大学に通っていた時に、何かの拍子でタイポグラフィのコースを取ったという話をするのです。それは何故かと言うと、たまたまそのクラスに入っていく女の子に気をとられたからだと。

その時点ではタイポグラフィが将来どうなるか、また何につながっていくのかなどといった展望は、彼の中にまだなかったわけです。しかし、結果的にはその時に学んだタイポグラフィの知識が、デザインに対する深い思い入れにつながっていき、やがてはAppleのプロダクトの道に大きく貢献していくのです。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

一期一会でチャンスに身を任せた先に、道がある

何かに取り組んでいる時、それが何につながっていくのかはわからなくても、そのチャンスに身を任せても良いということです。そう思った時、その瞬間やそのとき周りにいる人たち、そういった機会をひとつずつ大事にしていくことが非常に大切だと思えるようになったのです。これは日本の茶道でいう、一期一会的な考え方です。

そういうふうに気持ちを持って目の前の問題に取り組み、そこから何かを学び、それがどこにつながっていったとしても、その旅路をエンジョイすることができたら、スタートアップがビジネスとしてどこまでうまくいくのかといった1次元的なゴールだけに支配されることなく、より旅路の喜びそのものを感じてもらえるようになるのではないかなと、僕は思います。

それをより多くの人に感じていただきたいですし、そういう考え方をより多くの人に広めたいのです。

スタートアップはある種の不安がつきまとうものかもしれませんが、安心して何かに飛び込んでいけば良いのです。何かがあなたを支えてくれますし、その道はどこかにつながっています、というお話をさせていただきたいなと思いました。

XTC JAPAN連続起業家川口氏のキーノートトーク

このXTCJapanというイベントは、皆さんにとっての清水の舞台と言いますか、ジャンプ台と言いますか、次の何かのステップにつながっていくものになれば、5年後あるいは10年後、20年後に、またさまざまなところに思わぬ咲く花が咲くと思います。

僕も20年前、アメリカに来たときの自分を考えたときには、今の姿はとても想像がつかなかったものです。そのような感じで、さまざまなところで花が開いていけば、すごく楽しみなことだと僕は思っています。

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