今回の記事ではXTCが世界における企業の活動をどのように支援しているかを振り返ります。XTCグローバル受賞者の4名を招き、XTC創設者のYoung Sohn (ヤン・ソン)が聞き手となり、参加のきっかけから10年後の展望についてをお聞きしています。
Youtubeにも「Tech for Purpose: How XTC Helped Launch the Startups That Are Changing the World for the Better.」の題名でこちらの記事の会話が閲覧できます。ご興味がある方はぜひそちらの動画も確認してみてください。
XTCはどのように世界のスタートアップを支援しているのか
ヤン・ソン Bill Tai(ビル・タイ)と私は2015年にExtreme Tech Challenge(以降、XTC)を設立しました。これは起業家やイノベーターが世界に新たな変化をつくり、大きなインパクトを与えることができると信じ生み出されたものです。一流企業、ベンチャーキャピタリスト、政策立案者、大学などが起業家たちとつながり、彼らの企業経営を加速させることができるとビジョンを描きスタートしました。
この数年間、私たちは世界中から集まったバイタリティに溢れた素晴らしい起業家たちと出会ってきました。そして、イノベーション、テクノロジー、そして未来がどうなるかを予測することに情熱を傾け、多くのことを学びました。未来のリーダーたちと共に仕事ができるということは、喜ばしいものです。
今日は、次のトレンドを掴み、一歩前へ歩みを進めている創業者やCEOの方々をお招きして、このコンテストに参加した理由、経験から得たこと、そしてXTCがこれからのビジネスへどのような影響を与えたのかについてお話しいただきます。
世界最高峰のコーチ陣に恵まれる環境
ヤン まず始めに、XTCに参加されたきっかけと、どのような経験をされたのかについてお聞かせください。
まずQuintessenceLabs(クインテッセンス・ラボ)の創業者兼CEOであるドクターVikram Sharma(ヴィクラム・シャルマ)にお話を伺います。クインエッセンスラブズは、2021年のXTCにてEnabling Technology部門 Global Top 4に選ばれています。
ヴィクラム XTCに参加した理由は、ヤン氏とビル氏のコンペティションに対するビジョンに惹かれたからです。「変革的な技術で未来を前進させる」という考え方は、クインテッセンス・ラボのミッションにとても共鳴するものでした。私たちのサービスは量子力学とサイバーセキュリティの交差するところに位置するもので、デジタル化が進む生活の中での信頼性を確保することを使命としています。
XTCを通じて、経験豊富な投資家や最高峰のエンジニアの方々と交流し、意見を交換ができたことは、いわゆる特権的な機会でした。また私たちは、既存のステークホルダーだけでなく、今後関わるであろう投資家に提供する価値提案をより綿密に検討し、洗練させることができました。このXTCに参加したことは、本当に素晴らしい貴重な経験になっています。
ヤン 次はRebecca White(レベッカ・ホワイト)氏です。
最近、2021年にXTC国連世界食糧フォーラムのスタートアップチャレンジ、Better Nutrition Winnerに選ばれPebble Labs(ペブルラブズ)のCEOに就任された方です。
レベッカ 我々がこのコンテストの参加を決めたのは、私たちのミッションとバリューを共有する人々、企業、および投資家となり得る方々と巡り会うことができる優れた方法だったからです。私たちにとってもXTCは素晴らしい経験になりました。まず応募の手続きがスムーズで、とてもわかりやすい。最終選考に残ると、XTCチームが提出書類の準備や提出方法についても、きめ細かく指導してくださいます。審査員の方々から出される問いかけも大変有益なものであり、我々企業に対する注目度も、コンペティション前と比べて飛躍的に高まっています。その中でも特にヤン・ソン氏や他の審査員の方々と交流できたことは、素晴らしいことでした。
ヤン 次は、2021年XTC ピープルズ・チョイスを受賞したPathGen Diagnostik Teknologi(パスジェン)の創業者兼CEO、Susanti(スサンティ)氏です。
スサンティ 私は、がん研究者です。起業家の家庭で育ったため、ビジネスの世界に身を置くことは自然な流れなのですが、アーリーステージの会社経営では、まだまだ学ぶことがたくさんあります。 インドネシアのXTC選考のことを知り、他のスタートアップのメンバーがどのように働いているのか把握したいと思い、応募することにしました。最終選考に残り、最終的にインドネシアで優勝したことで、この地域のスタートアップ・エコシステムに触れることができました。その結果、2021年のグローバルXTCのファイナルに参加する道が開かれたのです。
グローバルXTCの参加を通して、ビジネスにおける世界最高峰のコーチ陣からも学ぶ機会が与えられました。また世界にインパクトを与える方法について、ヤン・ソン氏とビル・タイ氏からあったお話しも、まさに目から鱗でした。他にもBill Reika(ビル・レイカ)氏による投資家との壁打ちもあり、自社を発展させるための実践的な知識と有用なスキルを身につける方法がわかる機会となりました。
ヤン 2021 XTC スマートシティ部門を受賞したFotokite社(フォトカイト)のChief Corporate Development Officer、Chris McCall(クリス・マッコール)氏にもご参加いただきました。
クリス 私たちがXTCに参加したのは、我々フォトカイトのインパクト重視のミッションと完全に合致していたからです。私たちのチームは、救急隊員の命を救うために日々活動していますが、XTCは、私たちのようなインパクト志向の投資家やスタートアップ・チームの背中を押してくれる存在でもあります。プログラムに参加している間、各チームは、投資家へのピッチを完成させたり、この分野のオピニオンリーダーとアイデアを出し合ったり、関連するプロジェクトに取り組んでいる他のチームを紹介したりと、それぞれが最も必要とするリソースにアクセスすることができました。
投資家やパートナーからの注目を集め、資金調達へ
ヤン XTCに参加した後の活動についてもお話しをお伺いしていきましょう。
このXTCで最も重要なことが一つあります。それは、持続可能な生活のための技術を世界に紹介することができるということです。XTCで支援に至ったパワフルな活動が、これからも続いていくことを望んでいます。
レベッカ XTCのコンペティションに参加したことで、投資家やパートナー候補からも多くの注目を集めることができました。私たちは、彼らと話すときに、自分たちを紹介する方法として、ピッチの一部の動画を使用しています。YouTubeで動画を公開し、私たちのプレゼンテーションの直前に視聴していただくことで、我々の企業を知ってもらうのに役立つ方法になっています。
クリス XTC後の活動は、とても目まぐるしいものになりました。2021年のグローバルファイナルに参加したのと同時期に、シリーズBの資金調達を完了しました。ヤン・ソン氏、ビル・タイ氏、そしてプログラムをサポートするベンチャーやコーチ陣と高いレベルの議論ができたことは、私たちが生み出した勢いを継続するために本当に貴重なものでした。
スサンティ 我々もXTC参加以降も他のアーリーステージの企業同様、パワフルに挑戦をし続けています。ただ、ビジネスモデルを完成させ、成長を加速させるための努力は、XTC参加後の方が明らかに充実しています。また、XTCグローバルは、世界のビジネス・コミュニティで大きな影響を与えてくれます。
グローバル・ファイナルでのピッチの後、シリコンバレーや東南アジアの投資家から面談の依頼がありました。また、XTC ピープルズ・チョイスの受賞は、我々のビジョンやミッションが、世界中の多くの人々の共感を得たということであり、チームにとって大きな喜びとなったことは言うまでもありません。この受賞は、私たちの目標である、より広い範囲でのがんの分子診断の提供、特にインドネシアを含む発展途上国でのがん治療の改善に向けて、さらに努力する原動力となりました。
ヴィクラム XTC参加後のこの8ヵ月間は、まさに目まぐるしい日々でした。約3ヵ月前に、シリーズBの資金調達を完了しました。今、その資金をさらに増強し、約3,000万ドル程度にし、拠点もスイスに移す予定です。この間、量子技術、特に量子サービス・セキュリティに対する認知度もさらに高まり、市場環境が非常にポジティブな方向で変化を見せています。実際、米国東海岸を拠点とするチーフ・レベニュー・オフィサーをNASDAQの上場企業から採用したところです。
世界をより良い場所へ、挑戦はつづく
ヤン 最後に、次のフェーズについて教えてください。5年後、10年後に実現したいことは何ですか?
スサンティ 最初に発表した製品は、大腸がん患者のためのPCRベースの遺伝子検査サービスキットです。治療オプションを階層化したことに加え、現在は肺がんを対象とした低コストの遺伝子検査サービスを開発中です。また、クラウドベースの病理学的インターフェースや、病理組織学的バイオマーカー、分析、定量化のための人工知能支援アルゴリズムを含むデジタル病理学ソリューションの開発にも取り組んでいます。次のフェーズとして、インドネシア政府や他のステークホルダーと協力して、HPVやEBVウイルスなど、がんに関連する感染症のスクリーニング検査の診断も視野に入れています。
5年後には、インドネシアやアジア以外の発展途上国でも、私たちのソリューションの一部をスケールアウトして拡大し、恵まれない人々のがん治療を改善するという目的を達成できるようにしたいと考えています。そして10年後には、多くの人々が私たちのビジョンに共感できるようなIPO企業を目指しています。
ヴィクラム 私たちは今、第二次量子革命の幕開けを迎えています。第一次とは対照的に、この段階では、自然界に存在しない量子状態を積極的にエンジニアリングしています。その結果、さまざまな新しいものが生まれてきています。みなさんも量子コンピューティングに関する講座や、それがもたらす劇的な進歩について聞いたことがあるかと思います。
量子コンピューティングがもたらす利点の一方、情報交換者や保存情報を保護するために私たちが使っている現在の技術の多くにリスクをもたらすことも事実です。興味深いことに、我々の企業では、”We use quantum to fight quantum (量子と戦うために量子を使う)”と言っているように、量子は脅威に対する解決策を提供してくれるのです。私たちのサービスは、量子テクノロジーとサイバーセキュリティの交差点に位置し、主に防衛、政府、フォーチュン500企業などの顧客に、現在だけでなく、将来的に量子的な敵に直面した場合でもデータを保護できる強力な機能を提供するための、量子機能を使用しています。
近年、2030年の量子サイバーセキュリティの市場規模は100億ドルと予測されています。そして我々の企業では、非常に成熟した技術スタックと成長可能な能力があり、量子サイバーセキュリティのリーダーとして、急速に市場に参入することができると考えています。今後5年、7年の間に、どのような成長軌道に乗るのか、とても楽しみです。
クリス ベンチャー企業は、常に規模を拡大することを目指しています。XTCのようなプログラムは、インパクト重視でスケールアップしていくので、とても今後が楽しみです。これから何かに役に立つような有意義なことを成し遂げ、そのインパクトを拡大することで、私たちの生活に具体的でポジティブな変化をもたらすことができると信じています。我々のサービスが地方の公共安全部門に導入され、公共安全部門とそのチームが、安全確保、人命救助、地域社会への貢献に必要な状況認識を獲得できるよう支援することを目指しています。
レベッカ 今年末には、第一回目の実地試験を行う予定です。長期的な計画としては、農業と水産養殖の両分野でさらなるターゲットを追求し、2025年と2026年に最初の製品を発売することを視野に入れ、大きな成長を目指しています。その一方で、私たちはチームとしての側面を成長させています。現在、微生物学グループの菌株エンジニア、農業グループの植物病理学者など、いくつかのポジションを募集しており、今年後半にはさらにいくつかのポジションを追加する予定です。採用も強化中のため、現在募集中のポジションの詳細については、LinkedInのページか当社のウェブサイトをご覧ください。
ヤン みなさん自身の経験をシェアしていただき、ありがとうございました。
私もかつてXTCの参加者でもあり、世界をより良い場所にするために引き続き力を尽くしていきます。このお話しを聞いていただいたみなさんにも、ぜひXTCへ参加していただき、XTCが成長し続け、私たちの住むこの世界に良いインパクトをもたらすことができるよう、力を貸していただければと思います。この度はありがとうございました。
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